いのちのパン
滝元順

新城教会主任牧師
滝元順

平和の君イエス・キリスト

 クリスマスシーズンには、他の季節にない、人の心に優しさを与える不思議な力があります。
 戦場に咲く、一輪の花のかぐわしいバラのような忘れえない事件が起こったのは、凍るようなクリスマスの夜でした。フランス軍の兵士らは、凍傷を防ぐため、からになった鮭缶に炭火をいれて靴に結びつけ、ドイツ軍の塹壕へ手榴弾を投げていました。
 そのときだれかが、ため息まじりにつぶやきました。
 「いまごろ故郷の教会では賛美歌を歌っているだろうなあ」
 「よし、おれたちも歌おう」
 暗い中からはずんだ声が響きました。
 やがて彼の小隊の塹壕から小さなささやきのような賛美歌がわいてきて、それは野火のようにフランス軍の前線塹壕全体に広がり、大合唱へと変わったのです。
 すると、ドイツ軍の塹壕から投げこまれる手榴弾がだんだんと少なくなり、とうとうなんの爆発音も、苦痛にゆがむうなり声も聞こえなくなりました。その夜、遅くまでフランス語とドイツ語の賛美歌が、交互に合唱されて続けられたのでした。
 紀元前約七百年、イスラエルの預言者イザヤは、イエスキリスト誕生に関する的確な預言を神から授かりました。
 『ひとりのみどりごが、私たちのために生まれる。ひとりの男の子が、私たちに与えられる。主権はその肩にあり、その名は「不思議な助言者、力ある神、永遠の父、平和の君」と呼ばれる。』
 ある意味で世界は現在戦火に包まれています。アメリカと同盟国は世界平和を脅かす国際テロ組織、アルカイダとそれを支援するタリバンを壊滅させるため、血眼になって戦っています。それに対しタリバンは、自分たちの神の名を持ち出して、この戦いをテロをも正当化するジハード、聖戦であると宣言しています。しかし、人類を創造した真の神は、聖戦を通して人類を恐怖に陥れるような暴力の神ではないのです。
 今年のクリスマス、私たちは心を合わせて「平和の君」と呼ばれるイエスさまに、戦いの終結と、テロのない平和な世界となるよう、祈ろうではありませんか。

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