いのちのパン
滝元順

新城教会主任牧師
滝元順

ゴスペル

 ちまたで流行っているものの一つに、「ブラック・ゴスペル」があります。この音楽はアメリカの黒人社会から始まったもので、「天使にラブソング」、「ママ・アイ・ウォントゥ・シング」などで日本にもおなじみになりました。声を張り上げ、全身を使って歌うエモーショナルなスタイルは、ストレスの多い現代社会において、人々の心を癒す音楽として広く受け入れられています。新城教会にも、「ヘブンリー・キングダム」というゴスペル・クワイヤーがあり、活発に活動しています(今年も新城文化会館でコンサートがあります)。
 先日メンバー一行が、本場のブラック・ゴスペルにふれ、ロン・ブラウンさんをはじめとするゴスペルの専門家からトレーニングを受けるために渡米しました。私もグループのチャップレンとして同行させていただき、生の迫力ある本場ゴスペルに触れさせていただきました。そこで、ブラック・ゴスペルの根底に流れているスピリットについても、さらに深く知ることができました。
 ご存じのように、アメリカの歴史には、悲しい奴隷制度がありました。同じ人間が人間を売買するなんて、考えられないことです。一端奴隷となったら、買い取った主人の固有の財産として、すべての自由が奪われ一生を過ごさなければならなかったのです。アメリカで売買されるために連れて来られたのが、アフリカの黒人達でした。彼らの多くが、来る日も来る日も、横暴な主人の下で重労働に明け暮れたのでした。そんな中、彼らの唯一の楽しみは歌うことでした。すべてが閉ざされた中で、唯一開いている天に向かって彼らは歌い始めたのです。「明日は来るのだろうか・・」と一人がつぶやくと、仲間の一人が、「明日は神が支配しておられる!」と答えます。また、他の黒人奴隷が「俺たちには明日はない」と言えば、「神は私たちを助けてくださる!」と互いに励まし合ったのです。そして、それらのうめきに、次第にメロディがついたのがブラック・ゴスペルのルーツとなりました。それはまさしく、奴隷達の心の叫びであり、心底からの「祈りそのもの」でした。
 やがて、彼らの祈りが実現する事件が起きました。リンカーンが大統領になったことを機に、南北戦争が勃発し、奴隷解放を掲げるリンカーン率いる北軍が勝利したのです。ついに1863年1月1日、奴隷解放宣言が発令され、すべての奴隷が解放され自由の身となったのです。
 さて、「ゴスペル」のさらなるルーツは「聖書」にあります。それを日本語訳すると「福音(ふくいん)」であり、その意味は「良い知らせ」です。そして、この良い知らせとは「敵の手からの解放」です。
 ゴスペルを、歌ったり聞いたりしたときに感じる開放感はどこから来るのでしょうか。それは黒人達の間で、「すでに神が祈りを聞かれた」という事実があるからです。もしも八方ふさがりの問題に苦しんでいる方がおられたら、イエス・キリストに祈ってみましょう。天は開いています!

声を出して祈りましょう。
イエス様のお名前で神の前に祈ります。私の心の中にある叫びを聞いてください。そして、私の祈りに答えてください。イエス様の名前によって祈ります。アーメン

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