プライドを砕かれて
クリスマスコンサートゲスト
クラリネット奏者
柳瀬 洋さん

「ただ技術を磨いて楽譜を音にしても、それは音楽ではない。あなたの演奏の中に、あなた自身の心の歌を感じ取ることができない。…ただクラリネットにしがみついてもダメだ。もっと音楽を、そして人生を学びなさい。」数々のコンクールで受賞し、学生時代から日本のトッププレイヤーと共に演奏活動を展開してきた私は、1980年、憧れていた師の下で学ぶために意気揚々と留学したドイツで、師自身によって語られた言葉に、全く砕かれてしまいました。そして私は、それまでの自分自身の姿に初めて気がついたのです。私が音楽の中に追い求めていたもの…、それはすさまじいまでの名誉欲でしかなかったことに。次々と襲いかかる目の前の試験、コンクール、オーディションだけにとらわれて、がむしゃらにライバルとの競争にしのぎを削っていた私は、がんばれば道が開ける、勝利できると信じていました。でも「何のために」がんばるのかを、深く考えていなかったのです。いや、その機会さえ見失っていたのかも知れません。しかし、この苦しみの中、私は音楽家たちによる聖書研究会へ参加するようになり、人生をとことん語り合う友を得たのです!初めて手にした聖書は、自分自身の醜さ、愚かさ、弱さ、罪深さを教え、でもそんな私をありのままで愛し、赦し、救ってくださるイエス・キリストへと導いてくれたのです。キリストに出会って、私の心に喜びの歌が生まれました。嬉しくて、嬉しくて、この気持ちをクラリネットで吹かずにはおれませんでした。それからまもなく、師からお言葉をいただきました。「やっと、あなたも私が言いたかったことが理解できたようだね。」そして、師の勧めで参加した、大作曲家ブラームスの生誕150年を記念し開催された、第1回ブラームス国際音楽コンクールにおいて、最高位を受賞することができました。帰国後、同じビジョンを持った家内と結婚し、神様の導きによって、クラシック音楽を通してキリストの福音を伝える働き「ユーオーディア」がスタートし、現在では国内外250名のメンバーを有するネットワークへと成長しました。「苦しみ」「悩み」「模索」の中でもがいていた私でしたが、今、振り返ると神様が与えてくれた大切な時だったと実感しています。

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