不安に効く薬

伊庭 喜代司さん

 私は、自宅近くで薬局を営んでいます。毎日いろいろなお客さんと接していますが、何せ薬局ですから来られるのは病気の悩みを持つ方ばかりです。そんなお客さんとの会話によく出てくるのは、何処々の何々山で病気のために拝んでもらったとか、家相や方角を占ってもらったとか、「日」が良いだの悪いだのといった、病気を治すため試行錯誤していることでした。同情する反面、私自身は別段何を信じるでもなく、信仰と自分は無関係だと思っていました。
 ある時、一人のお客さんといつものように病気の心配事について話していました。しかしその方は、何処で拝んでもらったとか、占ってもらったなどと言わない代わりに、意外なことを言われました。「私はクリスチャンです。教会にも通っていて、真の神イエス様を信じています。すばらしい神様ですよ。あなたは神様がいることを信じますか。」この勧めの言葉がなぜか心に残りました。
 家内の姉夫婦がクリスチャンで、それまでも何度か教会の集まりに誘ってもらいましたが、家内が行くことはあっても私は遠慮していました。しかし、このお客さんの言葉で、思いが変わり、教会へ通うようになりました。そして、イエス様を素直に信じることができ、家内と嫁の三人で洗礼を受けました。
 いろいろな宗教が世の中にあります。店に来られるお客さんのように、病気を治したい、問題を解決したい一心で、噂に左右されながら、皆闇雲に「神頼み」しているようです。しかし、“病気を治し、問題を解決できれば神”ではないと思います。
 私は、特に信仰心もなく、問題があったわけでもありませんでした。でも、休日に家族と楽しく過ごした後、夜になって明日の仕事を考えるとき、とても虚しく何のため働くのかと思われた日々が、希望のある人生に変えられたのです。また、家族に対して怒って怒鳴ることが多かったのですが、赦すことができるようになりました。時に感じの悪いお客さんに出くわしても、悪い態度で接するのではなくて、寛容な思いでいられます。こんな小さな変化を起こし、一日一日を平安と天国へ行ける喜びを持って過ごせるようにして下さる方こそが真の神様です。
 店には今日もいろいろな方が訪れています。心の中の死の恐怖から来る不安に効く薬は、ただ一人イエス・キリストだけが持っているのです。相変わらず片っ端から「神頼み」しているお客さんに、他とは比べ物にならない本当の神様の素晴らしさを知ってほしいと願っています。



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